B.立命館宇治高等学校における実践

1.情報環境

(1) コンピュータ
 
生徒用: Macintosh LC630。
教員用: Power Macintosh 8100 AV。今後,新教室に生徒用としてMacintosh を導入する予定である。

(2) 台数
 
生徒用:1教室に43台で,現在2教室が稼働中である。来年度よりもう1教室増設予定である。
教員用:各教室に1台。なお,すべてのマックにワープロ・表計算・データベース・グラフィックソフト・インターネット関連の ソフトがインストールされている。

(3) 配置
 は生徒用パソコン,Pはプリンタ(PS対応レザープリンタ)を示している【図3-3-6】【図3-3-7】。

 教員用の机に,パソコン・ワークステーション・スキャナー・MO・カラープリンタ・ビデオ・LD・音響装 置などを配置している。

(4) ネットワークの形態
 本校では,立命館大学びわこ草津キャンパス(BKC)と専用回線にて接続されており,コンピュータ教室内のすべての生徒用パソコンより,インターネットを利用することができる。

(5) サーバ
 サーバ(Sun)は3台あり,来年度はさらに1台増設の予定である。ルームサーバは,各教室の教員用マックの横に配置されている。また,ネットワークサーバは,コンピュータルーム1の横にある準備室に配置している。

(6) アカウント
 生徒全員にアカンウントを配付している(自宅からPPP接続可能)。
 教職員に関しては専任は全員に,非常勤講師は希望者にアカウントを配付している。

(7) その他

 本校では,土曜日に立命館大学びわこ草津キャンパスの施設(生徒1人1台利用環境でワークステーションを操作ができる)を利用し授業を行なっている。なお,使用しているワークステーションは,Sony NEWSである。
 また今年3月に完成する生徒寮にも,ハイブリットルームをつくり,マック20台を導入する予定であり,学校とはイーサネットで結ばれるようになる。

2.支援体制

 サーバなどの技術支援は,大学の教育研究システム課が行っている。教育面では,中等教育の情報分野について教員からなる委員会を設け,大学と附属学校(現在2校)のメンバーが集まり,現状報告やシステム上の問題点などを定期的に話し合う機会をもっている。また,本校(宇治校)独自にも校内で情報システム委員会を設け,教職員対象の研修会等を実施している。研修内容は,ワープロ(EGWORD 6.0)・表計算(Excel 5.0)・電子メール(Eudora-J)・WWW(Netscape)・ネットニュース(NewsWatcher-J)などに関する知識や技術習得の研修を実施している。

3.実践意図

1)教師の意図
   生徒における情報活用能力の育成をめざし,その一環として情報やデータを扱う道具としてのコンピュータや,ネットワーク利用による授業実践を,教科を問わず情報教育の推進といった観点よりめざして取り組んでいる。さらに,より高度なコンピュータを利用した多様な情報処理教育へと関連づけながらカリキュラム編成を試行し,生徒の課題意識や主体的学習の育成をめざしている。とくに,生徒にとって開かれた学習環境を提供してくれるコンピュータネットワークの利用を授業に取り入れることにより,世界規模での情報受信・送信が行えるなど,その教育成果は期待できる。そこでは,従来の文字レベルにとどまらず,多様な媒体(マルチメディア)の情報を収集・整理し,それをもとに自ら発想・表現する能力の育成にも貢献できると考える。

2)具体的方略
   情報科と英語などの教員が連携し,本校が海外の提携した学校での生徒との間で,自己紹介や学校紹介,生活についてなどの情報をネットワークと英語のメディアを用いて相互に交換し,コミュニケーション能力,異文化理解について学習させる。
 また,教科外でも「マルチメディアクラブ」を発足し,インターネットを利用した活動を行っている。コンピュータ教室は,課外に生徒たちが自由にコンピュータを利用できるよう,放課後は生徒に開放している。

4.学習活動

(1) 学年
  1年

(2) 教科,教科外
  情報処理(必須),情報処理B(選択)
情報処理以外(他教科と連携して情報の授業中に行うこともある。)

(3) 単元・領域など
アプリケーションソフトの活用

(4) 具体的活動

 情報処理(1年必須)

 本科目は,本校(宇治)にてマックを使用して行っている。生徒は1人1台のマックを操作できる環境にある。指導体制は,教員1名とTA1名で授業を実施している。なお1クラスは,43人編成である。
 1学期はワープロ操作技術の授業を実施している。学習内容としては,「キーボードに慣れる」と「課題等の提出物をワープロで作成できる」を目標としている。ワープロソフトはEGWORDを使用している。具体的には,入力速度として10分間に200〜300文字の入力を目標としている。また,絵や表作成などの文書内への挿入技術についても習得させている。
 2学期は,インターネットの電子メールやネットニュースについて学習させる。生徒間で自由に情報交換ができるようになることを目標に学習を進めている。電子メールソフトは,Eudora-J を利用しており,ネットニュースソフトは,NewsWatcher-J を使用している。具体的には,電子メールで外国を含む生徒間の電子メールの交換,教員へのメール送信や,さらに書類添付機能を利用して,絵や音声等のデータ送信ができるようにする。ネットニュースでは,大学に依頼し宇治独自のニュースグループを作り,投稿や受信の学習を行っている。また,「戦後50年 私の意見」と題し全生徒に投稿させ,相互の情報交換を学習の一環として実施している。
 3学期は,インターネットのWWW分野について学習する。インターネットを利用し,文字以外の絵や音声などのデータを送受信できることを目標に学習を進めている。WWWブラウザとしては, Netscape を使用している。具体的には,Netscape を用いた情報検索や,自己紹介のホームページ作成などを行っている。自己紹介ホームページは,今年度3月末公開を目標として準備を進めている。

情報処理B(1年選択)

 本科目は,土曜日に立命館大学びわこ草津キャンパスを利用して実施している。使用するコンピュータは,ワークステーション(WS)である。ここでは,生徒1人に1台のWSが操作できる環境である。指導体制は,教員1名とTA4名で授業を実施している。1クラスは,33名前後で編成されている。
 授業の前半では,エディタの練習と電子メールについて学習する。ここでは,「WSに慣れる」を目標に学習を行う。エディタは,Muleを使用している。電子メールもMule上から利用している。具体的には,エディタ分野では日本語入力の練習を学習の中心とし,電子メール分野ではメール交換技術を中心に学習を進めている。
 授業の後半では,ネットニュース,ファイル転送およびWWWについて学習する。ここでは,「全員が情報の送受信を出来る」を目標に学習を進めている。ネットニュースは,mnewsを利用している。具体的には,mnews を用いて投稿と受信の練習をしている。テーマとして,戦後50年の意見交換や,おもしろいニュースグループの紹介などを実施している。ファイル転送では,FTPを利用しファイルを転送する学習を行っている。具体的には,指定されたディレクトリにあるファイルを取ったり,逆に指定ディレクトリに送ったりする。生徒が,自在にディレクトリ間を移動できるようにする。また,anonymous ftpで公開されているサーバよりファイルを受け取るなどの学習を行う。WWWでは,xmosaicを使用し,ページ検索を行っている。Muleにて簡単なホームページを作成し,HTMLの練習を実施している。

5.成果と課題

 生徒は,自主的に放課後などの課外時間にコンピュータ教室を利用し,インターネット(メール・ネットニュース・WWW),ワープロ,ペイントソフトなど各自の目的や関心に応じ積極的に活動を展開している。活動内容は,ワープロでは課題の清書,学級・生徒会・クラブなどのプリント作成に利用している生徒が多く,文化祭などの学校行事前は,台本作成やチケット作成などに多くの生徒が利用している。
 インターネットでは,自分が興味のあるページ中心にネットサーフィンしたり,友人間の連絡に電子メールやネットニュースを利用する生徒が増えはじめている。
 ホームページの利用では,前述した戦後50年企画として戦後50年企画実行委員会やマルチメディアクラブが作成したページが生徒により活動を開始している。さらに授業でも今年度3月末を目標に生徒全員のホームページを作成中である。(http://www.ritsumei.ac.jp/ujc/index.html)
 このように,本校ではコンピュータの教育利用に関して非常に恵まれた情報環境と,藤井,川崎両先生のように有能な教員のもとで活発な授業実践が展開されている。とくにネットワークやマルチメディア技術などの教育利用は,授業内容や方法はもちろん生徒の学習活動に大きな変革が生じ,生徒における問題解決能力の育成や発見学習をはじめ,今回の実践にもみられたように,国際理解教育など教室から解放された学習体験を通して,今日的な教育課題である生徒の個に応じた学習活動への助長としても今後大きな期待がよせられる。

(林 徳冶:京都教育大学)


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