JNK4 情報ネットワーク教育活用研究協議会

目的と活動

 21世紀をむかえ、情報化、国際化の進展に対応して、社会は大きく変化してきています。これからの子ども達に求められる能力も、これまでとは大きく異なってきます。OECDでは、近い将来の子どもの能力評価として、「情報活用能力」をあげ、15歳テストで国際的な比較を行おうとしています。わが国でも、2002年度に学習指導要領を改訂し、21世紀に必要な実践力を養うことを目的に「総合的な学習の時間」を新設しました。更に今年度からは、普通教科「情報」を高等学校に設置し、小中高一貫の情報教育を進めています。教育の情報化の重要性も強く認識されています。政府の e-Japan 重点計画では、「平成17年度までに概ね全ての公立学校が高速インターネットに常時接続可能な環境に置かれ、子どもたちがそれぞれの能力を高めることなどにより、人的資源大国となることを目指す。」とうたっています。


 このように「教育の情報化と情報教育の推進」は、わが国が国際社会で生き残る最重点課題と位置づけられ、カリキュラムや学習環境が整備され始めました。


 しかし、教育現場に足を踏み入れてみると、まだまだ混乱が見られます。

  • 何のために、情報化や情報教育を進める必要があるのか
  • 具体的には、何から始めていけばいいのか
  • どのようにして、情報を得たり、成果をあげていけばいいのか
などについて答えられる、理念と実践をつなぐような、基礎的で重要な活動がほとんど行われていないからです。


 一方、文部科学省や経済産業省などは、情報教育や教育の情報化を進めるための、さまざまな施策を進め、教育用デジタルコンテンツの開発、学校インターネットの高速化などの事業に、多くの予算を投入できるようになりました。これらの事業の進め方においては、これまでの教育産業のみへの発注やハードウエアへの投資だけといった経費の使い方の反省から、最近は、企業と教育現場の教師や教育委員会のコンソーシアム方式によるコンテンツ開発が公募されるようになり、以前よりは現場の改善に貢献できるようになりました。しかし、必ずしもこの方式が成功しているわけではありません。たとえば、コンソーシアム方式では、開発の期間が終わると、その後の維持管理が、コンソーシアムをまとめた企業の経営状態に左右されることになり、継続性の面で大きな問題が指摘されています。また、コンソーシアムに参加する教師も、実践の場として借り出されるだけの場合が多く、教師自身の自己啓発を高めることにつながっていきません。実際、プロジェクトが終了したあとに、そのプロジェクトの成果が継続して教育現場に普及している例は数えるほどしかないのが現状です。


 このようなことを、防ぐためには、単に教師がプロジェクトに参加するだけでなく、継続的に自己研鑽をすすめられるように、教育研究者や指導者が参加し、理論と実践を融合した、教員研修、情報交流、相互支援をつづけながら、学校組織や教師が自らの学習環境を改善していく活動を支援する、継続的で安定した仕組みが必要になります。


 そこで、私たちは、情報化時代に対応した教育の健全な発展のため、情報ネットワークを有効に活用した教育情報の普及と啓蒙、教育の情報化と情報教育の推進に関わる調査研究、情報教育のカリキュラムとデジタル教材の開発、情報教育を実践する教育関係者の育成と支援を図ること、を目的とした「情報ネットワーク教育活用研究協議会」を設立し、 研究と実践、施策と学校現場をつなぐ触媒として大きな役割を担うとともに、広く一般市民を対象として、社会教育の推進に貢献したいと考えました。


 具体的には、

  1. ネットワークを使用した教育情報の普及・啓発
  2. 教育の情報化と情報教育の施策に関する研究調査・助言
  3. 情報教育カリキュラムの開発とデジタル教材の開発
  4. 各地域で情報教育を実践する教育関係者の育成および支援
  5. 教育の情報化と情報教育等の推進に関わる事業
などの活動をおこない、情報教育に携わる教師の能力育成、21世紀に育つ子どもの健全な育成に貢献したいと考えます。


 本法人を設立に賛同した研究者及び教育現場の教員は、わが国における情報教育やインターネットの教育利用の立ち上げ時にかかわった人達ばかりであり、この数年間、それぞれの立場で、情報教育の推進や教育の情報化の支援活動を進めてきました。そこで、これらの研究者や実践家が一堂に会し、委託事業や啓蒙活動を、相互に連絡をとりながら展開することは、わが国の情報教育および教育の情報化の推進に大きく貢献するものと考えます。また、その成果を、有機的に関連づいた教育情報として、インターネットを通じて発信することにより、すべての教師の教育活動に役立てることが可能になるでしょう。

 これらの目標を達成するため、また事業の継続性を担保するため、特定非営利活動法人として、広く多くの皆様方の賛同と参加を求めるものです。

情報ネットワーク教育活用研究協議会(JNK4)
会長 永野和男(聖心女子大学 名誉教授)